柄シャツ着ていかがわしい感じの尾形と、リーマン月島の組み合わせを思い付き、描いたイラストが切っ掛けで妄想が膨らんで膨大なネタ量になった「#いかがわ尾月」です。
以下Twitterのスレッドで下げていた設定やネタetc…
●テキトー設定
尾形はアロハシャツにハーフパンツ+サンダル時々グラサンでいかがわしいけどただのタバコ屋の店員。ばあちゃんが切り盛りしてるのを手伝ってる。
月島はヤクザを辞めたリーマン。頭(not鶴見/鯉登)がこの場の組員全員と素手でやりあって全員倒せたら組を抜けさせてやるって言われて実行して抜けた強者。
尾形は元リーマン(SE)で残業諸々で体調を崩して、ばあちゃんの所で休養しつつ時々手伝い。
タバコ屋の窓口のすぐ横に自販機があって、朝決まって缶コーヒー買ってその場で飲んで行く月島が気になってた。(出勤時のリーマンの為に朝は早く開けてる)
話すきっかけは自販機の釣り銭切れ。タバコは吸わない
両親弟は健在だが諸事情あって苦手。嫌いではない。
学生時代からの友人に杉元と宇佐美、バイト時代の友人に白石、谷垣、キロランケ。
杉元経由でアシリパとも交友がある。
体壊すほど働き続けたおかげで悲しいかな貯金だけあるので、もう少しゆっくりしようと思っている。
月島は父親が組に属しておりそのままなし崩しに所属。両親離婚。高卒。
父親にはいい思い出が無く組の中でも(何してしまうかわからないから)距離を置かせて貰うように依頼していた。
抗争で父親が負傷したと聞いても危篤だと聞くまで会いに行かなかった。
腕っぷしと仕事の真面目さで高い地位に登る。
ただ離婚した母親とひきとられた妹(いご草ちゃん)のことを気にしていて、たまたま組長室用の花を注文しに行った花屋で客として来ていた鶴見と話す機会があり、普通の生活をしたいと思うようになった。
父親との死別を機に組みを抜ける決意。
頭と面と向かって話をし、前述の条件を満たしたので抜けられた。
組を抜ける際の大乱闘の怪我のため数ヶ月の入院の後、鶴見の伝で工場の荷物の運搬や倉庫内整理などの仕事を紹介してもらう。
もともとの生真面目さとテキパキと仕事をこなしていく実力を買われ、働いていた工場から本社へ異動。営業補佐として工場側とのパイプ役している。
月島のいる会社の親会社に鶴見、鯉登がいる。
母親と妹は入院したとき見舞いに来ている。離婚後まともに二人と会うのは初めて。
死んだ父親は火葬式をしたが他の親族には連絡も入れなかった為、二人はこの時初めて父親の死を知る。
月島は今までの後ろめたさから二人には進んで会おうとはしない。
二人に少ないが月々仕送りをしている。
主に連絡を取るのは妹のいご草ちゃんと。
会社の最寄り駅からの出勤途中に尾形のタバコ屋がある。
会社に着く前にそこの自販機で缶コーヒー(80円とか安いヤツ)を買って飲みながら今日こなさなきゃいけない仕事を軽く考えてから向かう習慣がついている。
たまたまお札しか財布に入っていない日に限って自販機が100円の釣り銭切れ表示。
どうしたもんかと思っているときに、今まであまり気にしていなかった、自販機の隣にあるタバコ屋の小窓にいる尾形と目が合い、両替してもらう。
それからは朝缶コーヒーを買ったときに挨拶をするようになり、世間話するようになり、たまたま掃除に出てきていた尾形と立ち話したりするようになった。
組みを抜ける際、頭にうちの組はお前になにもしないように言って聞かせてあるが、他の所のことまでは無理だと言われており、今回のイラストは月島に昔ボコボコにされた人たち(月島に結構恨みを持っている)がいるのを見つけて月島が尾形を抱えて逃げるところ。
趣味はランニングと散歩と筋トレ。
タバコは組を抜けたときの入院を機会に辞めた。
〇ネタ
月島の会社帰りにタバコ屋の前で尾形と会って、話しながらそのまま夏の夜の河川敷を散歩したり、地元の夏祭り行ったり花火見たり、休みの日に用事があってタバコ屋の近くに来た月島と尾形で紅葉見に公園行ったりしてほしい。
散々少しずつ会うことを続けた後に飯でも行くか?ってなって、そこからやっと連絡先交換してオフで会うようになったら良い。
〇描きたい
月島が野間(昔月島が属してた組の組員)に話しかけられてるの見て『カタギじゃない…』と思いつつどんな関係なんだろうか?とか、野間と話してる時は自分と話してる時より上下関係を感じるような話し方になっていて月島にも色んなつながりや側面があるんだ、知らないことばかりだな、と思う話
〇描きたい
尾形が杉元、白石、宇佐美に連絡をして久し振りの食事(厳密には宇に連絡して、数珠繋がりで増えた)
退職して療養に入ってから、尾形から声をかけることは無かったのでどうしたどうした元気かよおいと集まる。
最近朝立ち寄るリーマンと話すようになって幾月、そろそろ俺も働きたいかもと思ったともらす。
療養始めた頃は仕事の話を聞くと働いてない自分を責めたが、今回は格好良いなぁと思えた。
もちろん同じことにならないようにするが…お前たちの職場はどんな感じなんだ?と居心地悪そうに問う尾形に、珍しく自分のことを話す尾形に嬉しくなり全員色々教えてくれる。
ただ3人とも接客業(宇佐美)、運送業(杉元)、フリーター(白石)の為、元SEの尾形としては色々な職業が知れて良かったものの、次にどうするかはなんとも、だった。
「その、朝話すっていう人にも聞いてみたら?」
宇佐美の言葉に詰まる尾形。
まだ自分の状況を言っていないから、そんなこと聞いたら自分の事も話さなきゃいけないだろ?と困り顔に。
「どんな勤め先なんですか〜とか、疲れてそうなら仕事きついんですか?とかお前のこと話さなくても聞き出せることはあるだろ?……まあ、お前の状況話したほうが知りたい話は聞けるだろうけど」
宇佐美に言われてまた困る尾形に「まあ毎日会うんだろうから、少しずつ聞いたら?」という白石の言葉に頷く尾形。
〇描きたい
前山の働く花屋に出向く月島。
組にいた頃によく花を買っていた花店で、前山ともその時話すようになり、今では食事なども行く仲。
若者に贈り物をしたいが気の利いたものが思いつかないという月島の相談に「彼に相談したほうが良いよ〜」と江渡貝君の名前を出され、確かにな!と、なる月島。
江渡貝君はオーダーメイドの革製品のお店を営んでいて人気の職人。
組に属してた頃に兄貴分のお使いやら贈り物のお使いで受け取りに顔を出したことが有るので月島とも顔見知り。
相談しにいくとあまり尾形の特徴や好みを伝えられないので江渡貝君に「何か考えるにも情報が足りないです!!」と怒られる。
「今回は無難に名刺入れ辺りが良いんじゃないですか?再就職応援みたいな気持ちで送りたいんでしょ?あまり凝った物だとその人も引くでしょうし、このシンプルな奴なら僕のお店の中でもお買い得ですよ!今なら名前入れるのおまけしてあげます」とオススメされるままにそれを買う月島。
贈るのはもう少し先。
〇描きたい
月島がいつもの様にタバコ屋の前にたどり着くと、いつも尾形がいる小窓に老齢の女性が。
いつもの様にコーヒーを買って飲みながら今日は尾形は居ないのか〜と小窓に視線をやると女性と目が合う。小窓があいて女性が月島に話しかけてきた。
「貴方が百ちゃんのいってた月島さんね?」
そうですと返すと「ごめんなさいね、いつもはちゃんと自分で起きられるんだけど、昨日はお友達と夜遅くまで外食してたみたいでねぇ。今朝は起こしても起きなかったよの」笑顔で話す女性に月島も笑顔で返す。
「貴方と話すようになってからなんて、絶対に起こしてくれよばあちゃん!なんていってね──
『ば、ばあちゃん、だれと話してるの!』と女性の後ろから髪のセットもしていない二日酔いなのか少し顔色の悪い尾形が飛び出てきた。
『つ、月島さん!?』
「あら、やっと起きたのね百ちゃん。うふふ、朝ごはん持ってきててあげるから店番交代ね〜」と慌てる尾形を置き去りに、女性は奥に下がっていった。
残される尾形と月島
「おはよう」
『お、おはようございます…ばあちゃん変なこと言ってませんでした?』
「百ちゃんって呼んでた位かな」
『…のすけ』
「ん?」
『百之助、尾形百之助です…』
「百之助っていうんだな。俺の下の名前ははじめ、月島基だ。改めてよろしくな」
『はい』
終始恥ずかしそうな尾形
「二日酔いか?」
『ええ、久し振りに学生時代のツレと飲んだんで加減間違えました…』
「しっかり水分とって、無理はするなよ。あ、そろそろ行かないと…また明日な」
小走りで遠ざかる月島を見送ってから、尾形は恥ずかしさで小窓の前で顔を両手で覆ってちいさくなっていた。
〇描きたい
「いつも変わった柄シャツ着てるな」
『この良さがわかるなんて、月島さん流石ですね!!』
「いや、良さというか、よくそんなの見つけてくるなと」
『月島さんも着てみたら分かりますよ』
「何が?」
『ドロップアウトする前はこんな服着てなかったんですよ』
『外れた感じがして、死んだようにごろごろ休ませてもらってる中で目に止まったのが新聞のチラシに載ってた奇抜な柄シャツで、あれはアロハシャツだったと思うんですが、外れたなら普段着ることもないシャツ着ても良いかなって思ったんですよ。気に入った服を身につけるのって気持ちいいもんですね』
『あとは、なんかこう、枠から外れた俺が息するのにこういうシャツが要るんですよ。そこから収集癖がでて大変なことになってますがね。なにより俺に似合ってるでしょう?』
「そうだな…全部理解するのは難しいが、お前に必要ならいいと思うぞ。確かに似合ってるしな」
『でしょう?』
「……会社を辞めた事は辛かったろうし、体調の事も少し聞いてるから色々あったろう。でもお前なら戻るのか他に進むのかちゃんと考えられるだろうから、無理せず頑張れよ。俺みたいな奴でもなんとかなってるし、お前ならもっと上手くやれるだろ」
『いや、俺を買いかぶりすぎですよ。月島さんみたいに真面目じゃないんで、そんな……』
「まあ、まだもう少しばあちゃんの手伝いしてあげても良いんじゃないか?」
『確かに。あ、月島さんも柄シャツ着ましょうよ!この前似合いそうな良いヤツ見つけて』
「いや俺はいいって!!」
尾形にとって両親弟と合わないズレてる感じがして嫌いじゃないけど苦手で離れたい。ばあちゃんは大丈夫だった。
そんな自分がおかしいのかと自問する事が多く、普通(平凡)に収まっていればいつかは大丈夫になるんだろうかと考える日々。
そんな中での過労で体調を崩す+退職休養。
尾形にとっては大きなショックだった。
有能で仕事もしっかりこなすが傲っていたわけではなく、ただ他の人間が自分の様にならずに働けている中で、ついていけなくなったことがショックだった。
やはり駄目なのか。
人それぞれとは頭でわかっていても、自分は出来なかったということが尾形に伸し掛かる
そんな中で自分の思考の靄を抜けるようなきっかけが柄シャツだった。
尾形にとっては普通そんなの着ないだろのジャンルだったから、それを着て、ばあちゃんからは百ちゃんは何着ても似合うわねぇなんて褒められて、ご近所さんにも派手だけどなんだか元気出るわねとも言われて、自分としては外れてる気がしてるけど、別に周りはなんてことなくて、嗚呼狭い中で苦しんでたんだと自覚。
それでもショックから完全に立ち直れたわけではないので、元気に働いている学生時代の友人達にはなかなか会う気持ちになれなかったりしてる。
体調もかなり良くなってから店番をするように。
はじめはタバコを買いに来るサラリーマンを見てもこの人は働きに行くけど俺は…という複雑な気持ちでいたが、そんな頃に朝の決まった時間に缶コーヒーを買って飲んでいく月島に目が留まる。
日々異なる表情で何か思案しながら缶コーヒーを飲んでいく姿を見るうちに俺もまた働けば良いんだよなと思う様に。
〇描きたい
仕事の帰り道。
いつもならしまっているタバコ屋のシャッターが半分ほど上がっていて、そこに尾形が椅子をだして座っていた。
月島を見つけると尾形が駆け寄ってきて『月島さんお疲れ様です。今日、このあと用事ありますか?』
「いや、帰って飯食って寝るだけだが…どうかしたか?」
『ちょっと付き合ってほしいところがあって』
「別に構わないが……先にどこかで食べるもの買わせてくれ」
『ああ、それなら月島さんの分のお弁当とお茶あるんで大丈夫ですよ!さあ、早くいかないと』
「弁当???おい、どこにいくんだ」
状況の飲み込めない月島の腕を掴んで歩き出す尾形。
連れてこられたのは近くを流れる大きめの川だった。
両岸が小高くなっていてサイクリングコースとウォーキングコースになっている。
急かされるまま上がると遠く どぉんという音が聞こえる
「花火か?」
川のおかげで開けた街の建物の隙間に、遠く上がる花火が見えた。
『丁度始まった感じですかね。案外ここからも見えるんですよ。しかもベンチもある』
立ち止まった月島の後ろで、尾形はベンチに腰を下ろして持ってきた保冷バッグを広げている。
『どうです?花火見ながら飯ってのも』
おにぎりとペットボトルのお茶を月島に差し出す。
「花火なんていつ見たか忘れた位だ。飯も悪いな。おにぎりの具はなんなんだ?」
『ばあちゃんが漬けた梅干しと、たしかご近所さんにもらったしぐれです』
「ばあちゃんが用意してくれたのか?」
おにぎりを頬張りながら月島が問うが、尾形から返事がなく、どうかしたかとそちらを向くと
尾形は唇をひきむすんで、暗いがなんだか顔が赤くなっているような気がする。
ペットボトルを持つ手が震えている。
『…お…俺が作りました』
「本当か?塩加減も良くて美味い。ありがとうな!何か礼をしないとな」
『い、いや、いつも一緒に見に行くばあちゃんが、今年は友達と見に行くって言ってて、ひとりで見に行っても良かったんですが、月島さんを誘えたらと思って、俺が勝手に準備しただけなんで、そんな、礼とか、気にしなくていいですよっ』
隣であたふたしだした青年の好意が心地よく、月島が思わず笑いだしてしまう。
「毎朝少し話すだけの俺にこんなにして貰うのは嬉しすぎるな!明日話そうと思ってたんだが、来週から2週間別の工場に出張になるんだ。お礼と言っちゃあなんだが、土産買ってきてやるよ」
『どんなお土産頂けるか、楽しみにしてますね』
「期待するなよ、俺センス無いからな」
『それ先に言われると不安しかないじゃないですか』
「食べ物にするかな〜」
『辛いのはやめてくださいね』
〇描きたい
夕方、尾形が店のシャッターを下ろそうと店の外に出ると、通りの奥から月島と女性が歩いてきているのが見えた。
(隣の人は初めて見る…な…。いつもはこんな時間に帰ってるの見ないけど…)
隣の女性が楽しそうに話しかける声が聞こえだした頃、思わず尾形は店の中に隠れてしまう。
(なんで隠れたんだ、俺)
引き戸の中に隠れて、暖簾に身を隠しながら、店の前を通る二人を覗き見る。
締め切っていない戸の隙間から声が聞こえる
『──でね、今日のはじめちゃんとの食事すごく楽しみにしてて』
「まったく、無理言って少し早く上がらせて貰ったんだ。同僚に感謝しろよ」
『うん!』
隣の女性は自分と同じ年くらいだろうか?月島よりは年若く見え癖っ毛なのかふわふわとカールした髪が屈託なく笑う表情に似合っていた。隣の月島も柔らかく笑っている。
これから食事に行くようだ。
(付き合ってる人、いたんだ…)
朝少し話すようになってまあまあ経つが、確かそんな話をしたことはない。
二人が通り過ぎてから店の外に出て、後ろ姿を見えなくなるまで見送ってから、尾形ははたと気づいて店のシャッターを閉めた。
(なんでこんなもやもやしてるんだ?)
その日の夕飯はぼーっとして何度もおかずを箸で掴みそこねたり落としたりしてしまい、ばあちゃんに風邪を疑われることになった。
翌日になっても尾形のもやもやは晴れず。
何故か月島と顔を合わせにくいなぁと思っていた。
「おはよう、尾形」
いつもの様に月島が缶コーヒーを買って小窓にいる尾形に挨拶してくれる。
『月島さん、おはようございます』
小窓を開けていつもの様に挨拶を返すが心なしか元気のない声になってしまった。今朝の月島がいつもより機嫌良さそうに見えたのもあったかもしれない。
「どうした?疲れてるのか?」
『うーん…寝不足ですかね。昨日寝付き悪かったんで…』
心配してくれる月島に適当な言い訳をしながら、どうしても月島に昨日の事を聞きたい気持ちが膨れ上がってしまう。
『…そういえば月島さん、昨日一緒に歩いてた方は彼女さんですか?居るなら教えて下さいよ〜話しててもそんな話題出なかったからビックリしましたよ〜』
努めて冗談っぽく、軽く流してもらえるように。努めて笑顔で。
なんでこんなもやもやしてるのか自分でも見ないように気づかないように相手にも気づかれないように。
『この前(花火)みたいに急に誘うのは悪いですね。今度があるかはあれなんですが、気をつけますから…』
「おい!ちょっとまってくれ」
尾形の言葉が途切れると月島が珍しく小窓に手をかけて尾形の顔を覗き込んできた。
「あれは妹だ」
『へ?』
真っ直ぐ見つめる月島の発した言葉に気の抜けた声が出た。
「この前話したろ?少し歳の離れた妹がいて、久し振りに母親と妹と俺の三人で食事する事になったのが億劫だって…」
『いや、覚えてはいましたけど…あの、あまりに似てなさすぎて…』
「似てなくて良かったんだよ。あいつがこんな鼻だったら可愛そうだろうが」
『確かに』
「……お前、酷いな」
『自分で言ったんでしょうが!……はじめちゃんって呼ばれてるんですね』
「昔から名前で呼ばれてるからなぁ。……お前聞いてたなら話しかけてくれればよかったのに。あいつお前の柄シャツ見たがってたんだぞ?小窓に居なかったから諦めたのに」
『ちょ!!妹さんに柄シャツに目がない変人だとか伝えてないでしょうね!?』
「そこまで言ってない。ほぼ毎日会ってるが同じ柄のシャツを見るまでかなりかかったことと、どこで売ってるのか分からない柄シャツは見飽きないってことだけだ」
『…事実なのでなんとも言えませんね』
「誇張はしないぞ」
『月島さんはあまりそう言う人を面白おかしく言うのはしなさそうですもんね。……昨日の食事は楽しめました?』
「億劫だったが、なんだかんだ会えば…な。あいつが居るからなんとかなってるもんだけどなぁ」
『今日いつもより元気そうだったんで』
「そうか?自分じゃ気づかなかったよ」
『俺もはじめさんって呼んでもいいですか?』
「ん?おう、いいぞ?その代わり俺も百ちゃんか百之介って呼ぶからな」
『──そ、それは…』
「ははは。お、もうこんな時間か、じゃあな、また明日!」
少し小走りで会社に向かう月島を見送りながら、尾形は少し頬を染めながら髪をかきあげた。
妹だと分かったときもやもやが晴れるのが分かった。自分のことを伝えられている事に悪い気がしなかった。
(これは気づかないふりを続けたほうが良いよな)
それでも尾形の機嫌が良くなったのは明白で、珍しく鼻歌なんか歌う尾形にばあちゃんに何か良いことあったのねぇと何度も言われることになる。
翌日、またいつもの様に月島が缶コーヒーを買ってから尾形に挨拶する。
「おはよう」
『おはようございます』
「そうだ、尾形。いつでも誘ってくれて構わないからな。まあ出来れば朝言ってくれると助かるが…」
『な、なんですか月島さん急に』
「いや、この前(花火)みたいな誘いに次があるかわからんみたいな事昨日言ってたろ?」
『言いましたね…』
「基本会社と自宅の往復だからな。楽しかったんだよ。夜なら朝みたいに時間を気にせず話せるしな。またお前が良ければ誘ってくれ」
『ばあちゃんに頼まれた買い出しとかに同行願っても?』
「ここから買いに行くなら駅までの途中にあるスーパーだろ?俺もついでになんか買えるしな、構わないぞ」
『軽い』
「口実みたいなもんだからな」
『口実?』
「お前と話す時間の口実。立ち話で駄弁るのも良いが、何か用事が合ったほうが俺には都合が良い」
『──そう、ですね』
用事を用意しないと会う約束はしにくいお年頃。お茶しましょうとも誘いにくい性格。何かのついでにそれに付き合うくらいがちょうどいい。
こうして夜尾形と月島が並んで買い物をしていたり、駅まで尾形が月島を見送ったり、お弁当を用意して川沿いで食べてから散歩する姿が見られるようになります。