巡り廻りまたこの季節。いつまで続けられるのかお先真っ暗腹の中。
突き破り乗り越えペンを片手に突き進む。
頭を抱え苦しみながら、はたして終にたどり着けるのか、お楽しみいただければ幸いです。
さあ、今年も開幕です。
彼女は自分の髪がお気に入りで、いつも自慢げに指で梳いている。
研究所近くにある浜辺を管理している彼女に皆敬意を示しその髪を美しいと称えるが、その髪に触れる者は少ない。
ごく僅かではあるが…彼女の本来の姿を見たことがある者は近づく事もできなくなるという。
大きな嵐が過ぎた後は海洋調査に出る事にしている。
その日珊瑚の状況確認のため潜った場所で唸り声と囁き声が鮮明に耳に届いた。水の中なのに…だ。音を頼りに視線を向けるとゆっくり海底を移動する姿が。
……調査は終いだ、あんなものと関わりを持ってたまるか。
頭の上から失礼するよ。
なにか困りごとがおありのご様子だったものでね、思わず声をかけてしまったよ。なぁに、私はしがない探偵まがいさ。相手の素行調査、噂話の裏取りや裏情報の入手、その手の輩との窓口なんでもござれ。
ま、ヒトでなしなんでご利用は計画的に…ね?
銃声や叫び声、轟音に交じって戦場で聞こえるはずのないものが聞こえる。幻聴にしてははっきりと聞こえる。耳に頭に体に音がしみこんでくる。手の震えは治まり、霞む視界が澄み渡っていく。
『加護は我らにあり!!』
誰とも知れぬ叫び声を合図に皆が一斉に突撃を開始した。
『雨の日の街を彷徨う黒い森。見つかった魂は飲み込まれてさようなら』
そんな噂話を耳にしたので先輩に聞いてみると、情報が古い…という顔をされてしまった。
「基本彼は無害だよ。かなりまじめな運び屋だからね。ただし邪魔でもして怒らせたら…噂通りになるだろうね」
金属のこすれる音だけが聞こえる夢を見る。音は日に日に近くなっていき、今日遂にその姿を見た。
何かを静かに繰り返し発しながら腕の刃をこすり合わせていた。
断ち切る、という感覚を得た瞬間に飛び起きた。全身に嫌な汗をかいている。アレは私の何を断とうというのか。
一歩一歩、この重く鈍く遅い身体を引きずる様に進む。
どうしてこんな事になっているのか?
俺は人間ではなかったか?
いかほども進まぬうちにどこからか声が聞こえた。
「生前の行いから貴方はその姿となりました。いつか辿り着ける果てにて次への巡りが訪れるでしょう」
紙を燃やす臭いが鼻をかすめ、周りを見回すが火の気や煙もない。
「選定者が来ているようですね」
前を歩いていた先生が私に振り返った。
「おそらくこの臭いの濃さから多くの人が選ばれたのでしょう。災害か争いか。なんにせよ葬儀屋に声をかけておいたほうがよさそうです」
密林の奥にある集落へ向かうため、最寄りの町へ立ち寄った。そこの老人達に集落の事を聞くと一様に複雑そうな顔をしてから「呼ばれているのか…」という様な事を言われる。
呼ばれている者の前には必ず案内が現れるのだそうだ。帰ってきた者がいるのかは怖くて聞けなかった。
彼が私のヘルパーになって今までより格段に生活がしやすくなった。盲目の私には彼の姿は見えないが、どんなカタチだとしてもいつも温かく介助してくれることに感謝している。
「催しのチラシを手渡してもらったらしいんだけど、何か面白そうなものはある?」
『ソうデスネ…』
公園で神社で林の中で目が離せない木を見つけたら気をつけな。殆どは見つけてほしいだけの精霊が影響を与えているだけなんだが、たまぁにあんな風なモノがいる。
何に気を付けるべきかは分かるな?
着飾って上機嫌なうちは次を探さないから、しばらくは大丈夫だろう、行くぞ。
「月爺まだ~?」「まだぁ?」
『気が散るわい、しずかにしとれ』
「だってもう帳おろさないと」「夜来ないよ~」
『夜空の帳を下す送信機壊したのはどいつだったかのう』
「わざとじゃないもん」「ないもん」
『もう少しだから待っとれ』
「月爺やさしい大好きー」「すきー」
通信室のスピーカーから微かに旋律が聞こえる
「鼻歌?姐さん上機嫌みたいですね」
計器から視線を上げ、隣のリーダーに視線をやると顔色が悪い
『あまりしっかり聞くなよ…。あれは同意なく軌道上迎撃機に同期さた上に強行打上げした博士への呪詛だからな』
「うへぇ…了解」
温室の隣にある保管室から最近いい香りがする。温かい季節にかぐ香りだなと備え付けの窓から中を覗いても何もない。しかも香りも消える。
小型のカメラを数台設置して数日。データを確認してみると、球根の保管棚にその姿を認めた。冬を越す同胞を見守ってくれていたようだ。
コンコンと窓が叩かれる音がしたのでカーテンを開けると網戸越しでもわかる奇妙な姿
『こンばンワ、貴方イヌ好きですね?このワたしが一緒に住むとしたら大喜びなのでは?」
うわ、喋るよ。…こんな押しかけ前にもあったな
『開けて頂けませンか?ワた─
「結構です」シャッ
『あの光ってるの、どしたの?』
「よく行く古本屋で知り合ったお爺さんに託すって押し付けられた」
『ふーん…』
「ハンドサインで会話できそうなんだけどね。手話ではないみたいだから意思疎通はちょっと難しいかも」
『(これ顔だよな、多分話せるんじゃないだろうか…)』
ピザを買ってきて、いざ食べるかと一切れ持ち上げると黒い何かと目が合った
「わ、われわれはカラダにわるいものをさきまわりしてたべちゃうぞダンだ」
「これはとてもカラダにわるいものだ」
「いっしょにたべて、おまえがたべるわるいもののリョウをへらしてやるんだぞー」
「しまった!」という博士の慌てた声に続いてどごんと大きな音が研究所に鳴り響いた。頭をかきながら窓の外を笑って眺める博士の隣に立つと、実験用の広場に招かれたモノが見えた。博士のデスクには『禁』とカバーのかけられた古書。
「さて、友好的だと良いのだけれどねぇ」
若い頃 長い黒髪が自慢だった老婆の住む町に髪の美しい女がやってきた。老婆はその美しい髪が欲しくてたまらず、深夜に女を襲って殺し喰らってしまった。
すると老婆の髪が黒くなり体も若返った。それ見た侍が首を刎ねると、髪が恨めしそうに何日もうねり続けたという。
針山の女王に繕えないものはないという。鉄すら縫えると噂がある程だ。
友人の形見の割れた籠手を家族へ届ける前に少しでも形を整えたいと訪ねると、女王は快諾してくれた。
金属に針が触れると熱せられて溶けているようにするっと通り抜けていく。目が離せなかった。
ななつごは なわでくくられて わたをしぼってはこづめにされた
『よるのおちゃかいするひと~?』
様々な凶事を起こした箱は、今はある町の屋敷の蔵に保管されている。毎日人数分のお菓子と飲み物を供え彼らを慰めているが、彼らの恨みが弱まるのにまだ何十年とかかるという。
目が覚めましたかお客人。
ここは池の底、貴方は無事入水し沈むことができましたよ。肉の袋が腐りそこから解放されるまではこの翁が話し相手になりましょう。
息をしていた頃は話芸で銭を稼いでおりましたが、ふむ、古典が難しいようでしたら貴方の人生をお聞きしましょうかね
「博士、この前から預かってるアレ、何なんです?」
「アレは“虫”だよ。虫の居所が悪い、腹の虫がおさまらないっていうだろう、その虫さ」
「誰の、なんです?」
「秘密~…というか私もそれは開示されていない。“誰の”というよりは“何の”のほうが的確かもしれないね」
『両親が変な宗教ハマってたのは知ってたんだ、でもさ俺の為に命と引き換えにカミサマ喚び出すとかありえなくないか?成功するとかもっとありえねぇよ』
親友からの電話が尋常でない様子だったので親友宅へ駆けつけてみると、親友は得体のしれないモノの前で泣き崩れていた。
嵐の轟音の中に聞きなれない音が聞こえ、民宿の外に出てみたが風と雨が狂う音ばかり
「どうかしましたか?」
背後からご主人に声をかけられた
『聞きなれない音がして…海岸の様子を見に行きたいのですが』
「今はいけません。貴方を呼んでいるモノが帰ってからにしましょう」
座ると祟られる椅子っての知ってるか?これが今話題でよ。手に入れた好事家が「座って1週間後自分を訪ねてこれたら大金を渡す」って言ってるのさ。
目的?んなもん知らねぇよ。
それで…よ、俺に一生かかっても返せない借金があるお前にこの話を聞かせた意味は…わかるよな?
地下の牢獄の中で鎖で首を繋がれた彼女が、戯れに話しかけていた闇に私は潜んでいた。気まぐれに彼女の問いに返答すると顔を綻ばせた。
身体と引換えに外に出してやると提案すると「最後に夕日を見せて」と快諾した彼女は、久しぶりの外の世界にそれは嬉しそうに笑うのだ
ちょっとそこの人、見えてるついでにどこか温かい場所を教えとくれ。
短い命から解放されてふらふらしていたら寒くなっちまって。長生きして辛いことしかないなんて困ったもんだよぉ。
「しょくぶつえん」ってところに「おんしつ」ってやつがあるって?是非つれてっとくれ!
それが私に教えてくれたことは3つ
卵を抱え孵す役目。孵ったら生かし守る役目。籠の中のものが死に卵に還るまで閉じ込めておく役目
ある日籠の中のものを観察していた仲間が「卵の中に還る」と書き残し自死した
籠の中からでも周りに害があるってことは先に知りたかった
HAPPY HALLOWEEN!

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