水ポケモンと相性がいいからなのだろうか
「水」が嫌いではない
プールというものも自分自身が楽しむ分には縁遠いものであるが
いつも働いてくれる手持ちたちを遊ばせるときには
プールサイドに座って足で水遊びすることがある程度には
陽に煌めく水面や、肌をすべる感触が嫌いではない
そういえば一度、悪ふざけしたギャラドスとブロスターが
ガメノデスと私を巻き込んでプールへ落ちたことがあった。
ばしゃんと水面を身体が打ち、落ちた勢いで底へ沈んでいく
うっすらと開けた目に映ったのは陽のさす水中の煌めきと明るさ
澄んだ水を通して見えるものは何かいつも見ている風景とは違う気がした。
好んで水に沈もうとは思わないが、
あの時の水を通してみた風景を瞼の裏に思い起こすぐらいがちょうど良い心地よさ。
最近、あの時と同じ様な「違う」と感じることがある。
それは同僚の、鋼使いの人とのやり取りでの事。
私より人生も四天王としても先輩の彼には、自分の至らなさを思い知らされることが多く
初めは老婆心からの言葉に反発もしたものだが今ではすこしは落ち着いただろうか。
そんな彼としばしの時間二人でその日来た挑戦者の事を話したり、
はたまた一日の時々にかわす挨拶や、食事の際にかけられる感謝の言葉になにか違う感触をおぼえるのだ。
「ズミ殿、頼みたいことがあるのだが…」
「なんですか、改まって。」
そう、とくにそれを感じるのはこんな時だ。
「その、パキラ殿に
『ガンピさんにお菓子なんて作れないにきまってます』といい切られてしまってな。
お菓子作りに協力してほしいのだ」
「…珍しい。そんな意地の張り合いで私に頼みだなんて」
「わ、我だって恥ずかしいのだが、その言ってしまったのだ」
「なんと?」
「『次の休日明けに作ってきて渡してさしあげよう!!』と…」
「いつも声を荒げる私に大人げないと声をかけていた人の言葉とは思えませんね」
「言ってしまったものは仕方がないのである!!」
「ふふ……そうですね、そこまで言って作れなければ
パキラさんにはずーっと揶揄われ続けるでしょうし。協力しましょう。」
「ありがたい」
笑った彼のくしゃっとした顔をみて、
揺れていた水面が凪になり、何かが浮かび上がってきた。
―― なるほど。
「ですが、私も専門ではないですし、
あまりにも出来が良いとパキラさんに私に協力をしてもらったとばれてしまいますよ?」
「それは重々承知である。
だから我が昔作ったことのある…作れる焼き菓子を
より美味しく作る事にズミ殿の技術と知識を貸してほしいのだ。」
「丁度一週間ほどは主だった用事もないですし。良いですよ。」
一度凪になった水面が気持ちと一緒に波紋を描いている。
このふわふわとしたものがもっと明確になるには時間がかかりそうだ。
とても半端で不明瞭。だが嫌いではない。
彼が差す光であるなら
私はそこにどんな色を差すのだろうか
それを通して見える風景を考える。
「それで、ガンピさんが作れるお菓子って何なのですか?」
「それは…」
隣で笑ってある焼き菓子の名前を口にする彼を見ながら
小さく口元に笑みを浮かべた。