少し肌寒さを感じる秋の朝、何時もより早くリーグへ向かったのは気まぐれだ。
ここの所のはっきりしないぐずついた曇り空とは打って変わった晴天に誘われたのかもしれない。

地面を踏みしめる音や掛け声にリーグ裏の開けた場所へ向かうと、やはり同僚が朝の鍛錬に励んでいた。
今はハッサムと素手で手合わせしている。
おそらくハッサムが加減しているのだと思うし、主であるガンピさんも加減しているのだろうと思うが、よくポケモンと手合わせするなと思ってしまう。
邪魔をしない様建物の影から見守っていたが、そろそろ自分も朝の仕込みをと、踏み出した際に音でも鳴ったのか

「ー!、ズミ殿!!」

彼に呼ばれ気付かれた事に驚き目を向けると、ぬわーとガンピさんがハッサムのアッパーで吹っ飛ばされていた。
驚いて駆け寄ると、控えていた彼の他の手持ち達も目を回して仰向けになるガンピさんを取り囲む。

「…いたた、久し振りに目を回した」

それ程強い衝撃でなかったのか、ガンピさんは大きな目をパチパチさせると起き上がった。

「まさかズミ殿がこんな早くこられるとは、思わず気をそらしてしまった。」
「人が綺麗に吹っ飛ばされる所を初めて見ました。」

正直な感想を漏らせば、ガンピさんはお恥ずかしいと頭に手をやる。

「ハッサムの所為ではないぞ?気をそらしてしまった我がいかんのだ。」

隣で心配そうにのぞき込むハッサムを撫でて落ち着かせながらガンピさんは笑う。

「ガンピさん、何時もより楽しそうですね。」
「分かってしまうか?」

ガンピさんはふふふとまた笑う。

「久し振りの澄んだ空と眩しい朝日に年甲斐もなくはしゃいでおるのだ。」

今朝はいつもより早く来て鍛錬を開始したのだか、手持ち達にもいつもより早いがどうかしたのかという顔をされたと話し続けるガンピさんに、自分も同じ様なものだったと思い出し、彼のにこにこしている表情にもつられ、

「ふふっ、それではまるで子供ですよ?」

と、思わず笑ってしまった。

高い空 / ズミガン

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