
皆様ご機嫌如何でしょうか。
今年も無事幕開けとなります異形達の集い。
これより31日、どの様なモノ達が集まり
どの様な物語が紡がれるのでございましょう。
間違っても引き込まれてこちら側へ来ることのございませんよう、
お気をつけくださいませ…。

鐘の音にのせ て記された名前が読み上げられる。
読み上げられる名前はりんごんりんごん鳴る鐘にかき消されて
聞き取ることが出来ない。
深きに沈む者の名か、登り出る命の名か、
鐘の音はそれをのせて響き広がっていく。

温室で飼育している蛹達が羽化しないと連絡があった。
一ヶ月以上羽化しない蛹達のひとつを調べてみると
カラダを溶かしたままだったという。
しばらく温室を調査してみると見慣れぬモノを見つけた。
おそらくこれが原因だろう。
蛹達の未来を奪い、コレは何に変態するのか。

彼女に冠を手渡すとどう扱うものなのか分からない様子ながら頭に乗せたが、
話しかけてもキョロキョロとするだけで意思疏通は取れそうにない。
女王である彼女がどうして囚われたのかも、
様々な幻獣を混ぜられてしまったのかも
建物の主が殺された今伺い知ることはできない。

ある忘れられていた種族が見つかったと聞き、その集落へ赴いた。
代々女王を立てることでも知られていた為拝謁を申し出た
「最後の女王があなた方に連れていかれてから幾百年戻りません」
族長と名乗った者は、悲しいとも可笑しいとも言えない表情でわたしを見つめた

『護り主様』という言葉を両親から聞いたのは
19歳の誕生日を祝って貰った時だった。
その主様は父方の血筋に憑いており僕達を守ってくれていて、
20歳で長男に引き継がれるらしい
幼い頃からの空想の友人である龍が、
隣で今頃知ったのかと渋い顔をしていて思わず笑ってしまった

あ、こんばんはぁ、気にしないで寝てていいのよ~。
…寝てくれないの…え?襲われる?いや体に興味ないし。
何してるって?あなたの夢を食べてるのよ。
あと生気も味付けに少し。
早死にしないかって?
色んな人間からつまみ食いしてるから影響は少ないはず…
さあ早く寝た寝た!

マジ勘弁してほしいわあの婆さん。
イヤホンで演歌爆音で聞きながらオレを抜くもんだから無傷だし、そのうえシワシワ具合がおじいさんに似てるわねぇ~なんて言われてよ、お日様も適度に当ててくれるし、水の管理もしっかりしてるし天国よ。
そりゃ逃げずに根も生えるってわけ

「なにそれ」
「なんか変な営業の人に渡された名刺」
「え、これヤバイやつだろ。てか…そいつ、どんなだったんだ?」
「バス待ち中にゲームしてて顔は見てない。
あい、あい~って適当に相槌打って貰ってやったから」
「おまえな…」
(ノック音)
「ん?こんな時間に誰だろ?」

仕事の後の一服はたまらないねぇ。
吸って溜めて呑んでだから仕事しなきゃ死んじまうからね。
人の食いもん食べられたらもちっとマシな生活もできたかもしれないが、
妖気や死霊しか食えないんじゃ無理ってもんさ。
やっぱ今の退治屋として細々生きてくのがちょうどいいや

祖父の部屋から最近物音がするので、
また何か起きたのかと覗くと、小さな棺がガタガタ動き回っていた。
窓からの明かりで見えたのは、
棺の蓋を盾に小さな剣を手にパトロールする戦士らしき骸骨の姿だった。
他の古物と争う様子もないので、そっと扉を閉めた

お迎えに参りました。
この時をどれだけ待ち望んだことか──なんのことか分からぬと?
……お忘れであろうと連れていきますよ?
契約ですし変更はありませぬ。
既に私の力で願いを叶えた後、
無かったことには出来ませんなぁ。
さあ、優しくお連れしますからお手を…

文字を読むのは面白いのか?
んー、俺は面白いけど蛇様は字読めないんだったか、
読み聞かせてやるから聞いてみるか?
え、それより世継ぎの件?白子の俺が継ぐのは一族的にちょっとなぁ。
……わたしが憑いてるから俺しか継げないだろうって?
それはそうだけどさ~

尾びれの一撃で用務員がひとり病院送りになった…が、
その後研究所の素体や薬品の紛失がぴたっと止まった。
悪事が彼に見つかってしまったとでもいうのか。
博士が言うには人間の脳を移植しているから言語が分かるらしく、
引き取ってもらった今の研究所に恩を感じているらしい

いらっしゃい~、うちの店は初めて?
ビックリしてるからすぐわかるわよ。
…というか貴女、フツーね。
むしろよく迷い混んでしかも迷子のままよく分からない店に入る気になったわね。
お腹すいたから?
あー…品書きも読めないだろうから相席してあげるわ。
その代わり奢ってね

よ!助けは必要かい?見ない顔だからよ。
ふぇ?あんあって?ああふぉのうえのこふぉか?
うねにいるやつがうごかしてうんだよ。
ぷはっ!運命共同体ってやつ。
俺手が無い上に、作っても柔らかすぎて掴むのも難しくってな。
勝手に潜り込んで住み着いたコイツと助け合ってるの

採掘中の遺跡に地下へ続く通路を見つけた。
通路はかなり深くまで続き、自然に出来たのだろう洞窟へ繋がっていた。
遠くに光え、近づいてみると案外近くにいた。
それは奇妙な生き物だったが触れた者が卒倒し
カメラに写らぬ事実を前に、我々はここを閉ざすことを決意した。

背中でハサミの音がして振り向くと、そこには浮いている女がいた。
それぞれが無数に持つ可能性の芽の中から切り取るものを選んで、
切り取るのが彼女の仕事なんだそうだ
『残った可能性がほんとに実ったり開花するのかって?そんなの知らないね』
─僕は何を失ったのか

最近見始めた夢がある。
三つの首が縄をかけられ引きずられていく夢だ。
見覚えのないそれらはわたしのどこから浮かび上がってきているのか。
光る手に縄を捕まれ引きずられていく彼らの夢は恐怖を感じることもなく、
目もそらせず、日に日に見る時間が長くなっている

捕らわれた魂はソイツの関心が無くなるまで解放されることはない。
聞こえるのは理解できぬ自分に向けられた音、
入れ物の外側を舐められる音、
キリキリと爪がたてられる音、
それ以外の外界の音は聞こえず、
しかし魂の悲鳴が外に漏れ出すことはないのだ。

見覚えの無い虫を見つけたので捕まえて先生に見せにいくと
鬼女房だと教えてくれた。
恨みを持った女の魂が宿ると姿を変え、
自身を苦しめた相手を殺すまでとり憑かれた虫も死ななくなるそうだ。
先生は小さく「やはり来たか…」と呟くと
危険だからと虫を取り上げ書斎に籠った。

最近駅前に白無垢姿のヒトで無いものがいる。
瞼を閉じ動かない。
彼女の近くへ行き観察するが何もない……と思っていると、
彼女の網のような髪がぴんっと弦を弾くような音を立てた。
彼女は少し口角を上げるとすぅっと消えた。
誰を待っていたのか。待ち人は現れたらしい。

こんばんは、こんな夜更けに人間が森でお散歩?危ないよ?
この森を抜けるのはお勧めしないな。
だって僕みたいなのが他にも潜んでるんだよ?
武器もないなら尚更さ。
足が動かない?そりゃ僕の根さ。
…何言ってるのさ、
僕が君を襲わない側だなんて一言も言っていないだろ?

本日のお世話は霧の主様ですね。
今から清め場で御体を清めますから、さぁさぁおとなしくしてください。
その後は香をたいて按摩です。
そして次はお食事。
好物はお聞きしてますから、ちゃんと用意してありますよ。
嬉しいですか?よかったですね。
でもその前にお清めですよ~

歩め進め燃やせ叩き斬れ
止まるな進め燃やしきれ
立ちはだかる物なぎ払え
燃やせ切り裂け忘れるな
思い出せずとも忘れるな
目指すはひとつ忘れるな
奪う命はひとつだけ
狙う命はひとつだけ

昼寝はやっぱり気持ちいいなー。
お日様であっためられた草の上は柔らかいし、土の匂いも好きだ。
草のそよぐ音も気持ちいい。
風は毛を優しく弄ぶ……でももう起きないと。
何か入り込んだ様だ。
さて、今回はどんな奴かね。
脅かして帰ってくれれば楽なんだがなぁ

太陽が傾き出してから沈みきるまでにお屋敷のすべての燭台に火を灯すのがわたくしの仕事でございます。
もう身体も固くなり、うまく動き回れなくなって参りました。
わたしの事は使用人達しか知りませぬ。
死してなお屋敷勤めなど、物好きのすることでございますな。

頭巾隊は林道の見回りが仕事だ。
通って良い道に光る石をまいていく。
この森は危険だ。
木々は何時でも枝に人間を吊るそうと揺れて蠢いているし、
狼もいつ噛りついたものか機会をうかがっている。
光る石が境界。
石は簡単にどけられてしまう為、毎日見回りと石まきをするのだ

スカートが暦になっている事に気づいたのは何時だったか。
存在し始めた時からそうなのだろう。
破り捨てるごとに身が軽くなる。
時を告げる鐘の音を聞きながら、今夜にも破り捨てる頁の端を摘んで弄ぶ。
全て破り捨てると鶏の声が響き、また分厚い暦の服を纏うのだ

捕らえられて何年何十年たったのか、
自由になった今ではどうでもいいか。
持て余した時間に鎖以外自由だからと鍛え続けた結果、
封印の鎖を引きちぎってしまった。
……筋力と魔力って関係あるのかね、
なんにせよ筋肉ってすごいね!
手始めに、おい、そこのお前、相手しろ!!
