『ブラッディサニー組』とは。
Twitterの診断メーカーの診断結果をもとに始まった、
はちすさん(@hati_su8)との共同創作です。
登場人物であるアル・シャインに関してはこちら
相方として登場するレーヴ・ウェイクマンさんは、はちすさん(@hati_su8)の創作されたキャラクターです。
この小話は2021年9月に発行したまとめ本「BLOODY SUNNY From 2015 to 2021」のweb掲載版となります。
掲載順も本と同様となります。
── Interlude 03
それは、ついと言うには無意識で
ぽんっ
分担していた依頼をこなし、とんとんと駆け寄ってきた相方の頭に、
褒めるように手を置いてしまった。
彼の身体がビクッとはねる。
触れられる事を嫌っていると知っているのに、後悔からか唯でさえ低い体温が下がった気がし、はっとして手をどけた。
目の前の相方は両手で頭を抑え、頭を揺らしながら眉間に皺を寄せて何か考えている様だ
ぐっ
急に手を引かれ
ぽんっ
引かれるまま自身の手のひらが相方の柔らかな髪の上に着地する
「アルならだいじょーぶみたい」
乗った私の手に自分の手を添えながらふにゃっと笑う顔に何かが溶ける気がした
【氷解】
大家に鍋ごと押し付けられた野菜スープは、彼女らしい具沢山の大味のスープだった。
流石に一度には食べきれず保存した次の日
「なにそれ、…いい匂い」
「野菜スープだが、食べるか?」
「アルもたべる?」
「ああ」
「じゃあ、一緒にたべる」
「林檎もか?」
「ん」
テーブルに林檎を二つ並べ、ソファに座ってこちらを眺めるレーヴの視線を背中に受けながら、鍋を火にかける。
広がるスープの香りと鍋がことことと言う音を感じながら、久しぶりの穏やかな食事を思い、アルは目を細めた。
【二人で食事】
広葉樹の葉が色づき、道路に舞い落ち始める頃
「アル」
呼ばれて重い瞼を上げるが、頭はまだ覚醒できていないようだ。
「今日はおやすみする?」
既に身支度を整えたレーヴがベッド脇にしゃがんで、まだ起き上がらないアルの顔を覗き込んでいる。
「……頼んでいた情報が貰える筈…だから、行く」
もぞもぞと起き上がるアルの動きは鈍い。
身支度を整え、件の情報屋に会いにいつもの酒場へ向かう。カウンターで笑って手招きする情報屋を見るに、頼んでいた情報はちゃんと仕入れられたらしい。情報屋から目当ての情報を手渡されながら、二言三言言葉を交わすアルを少し離れた酒場の隅でレーヴが眺めている。視線の先のアルの纏う空気はいつもより棘や冷たさは感じられない。すると、こつ、とアルの前に頼んでいない酒の注がれたグラスが置かれる。酒場の主人が金は要らないとアルに向けてグラスを少し押す。アルは注がれた度数の高い酒に目を大きくすると、苦虫を噛み潰したように顰め面になった。
「…そうか、もうそんな季節か!」
主人とアルのやり取りを見ていた情報屋が手を叩く勢いで大声をだすと、一層アルの顔が険しくなった。
「情報代だ」
得た情報の対価をカウンターに置くと、前に置かれたそれを一気に煽ってアルが立ち上がる。
「……今日は仕事はしない。お前はどうする?」
駆け寄ってきたレーヴにアルが問うと、フードの下で首を横に振る。酒場を出て塒へ向かう夜道を歩き出すと、レーヴがアルを微かにつついて見上げる。
「最近起きるのゆっくりだよ。どうしたの?」
見上げる瞳に、アルが困ったように小さく唸った。
「大丈夫なんだが…。そろそろ冬着を着る時期だな。悟られるとは…情けない」
「まだ暖かいよ?」
「私は寒いのは得意ではないんだ。思考も動きも鈍くなる。今まではこうなる前に気づいていたんだが…………ぁ」
何かに思い至りレーヴの方を見るアルに、レーヴ本人は何か分からずアルを見上げるだけだ。
「…お前は温かいからな。まだいつものを着ていれば大丈夫だろう。」
「うん…」
心配そうに自分の顔を窺うオリーブドラブの瞳に、アルが、もうこの話は終わりと告げるように、レーヴの頭を撫でた。
「部屋着も変えれば落ち着く。心配かけてすまんな」
【ひとりの温度、ふたりの温度】
「香りが強過ぎるな」
「やっぱり? 煎れるともう少し和らぐんだけど…。珍しい葉だって貰ったのに、あたしもちょっと香り強いの苦手で」
「レーヴ?」
茶葉の缶を持つアルの手首を引き寄せ、すんすんと匂いを嗅ぐ。
「……これ、欲しい。いくら?」
「あ、えっ? 欲しいの? 気に入ったなら是非貰ってくれない? お代は要らないわ」
「…ありがとう。アル、先に帰ってる、ね」
「あ、ああ」
立ち去るレーヴの足は何時もより軽い気がする。
「──…あれは何処から手に入れたものなんだ?」
「さあ、行商人のお客から貰ったから、遠い街か国のものかしらね。なんて書いてあるのかすらわからなかったし」
「その商人は、お前の客なのか?」
「この前が初めて。もうこの街を発ったわ。…でもある国まで行ったら、また戻って来るような事言ってたっけ」
「見かけたら教えてくれ」
「どうするの?」
「同じ物を買う」
「ふーん」
「なんだ?」
「アスとふわふわちゃんって、不思議な距離感よね。たまに、分からなくなる」
「?」
「ふふ、それが当たり前ならわからないと思うわ」
街娼の笑顔に見送られ、アルは帰路についた。
レーヴはアルの部屋の物は勝手に触らない。先程手に入れた茶葉の缶を眺めているかもしれないと、アルは歩調を早めた。
【(今は)全て知る必要は無い】
Interlude 03 End.