『ブラッディサニー組』とは。
Twitterの診断メーカーの診断結果をもとに始まった、
はちすさん(@hati_su8)との共同創作です。
登場人物であるアル・シャインに関してはこちら
相方として登場するレーヴ・ウェイクマンさんは、はちすさん(@hati_su8)の創作されたキャラクターです。
この小話は2021年9月に発行したまとめ本「BLOODY SUNNY From 2015 to 2021」のweb掲載版となります。
掲載順も本と同様となります。
── Interlude 06
「忘れ物した」
仕事を終え一緒に私の部屋に入ってからすぐ、そう言ってレーヴが窓から出ていってしばらく経つ。ドアから入るのに出ていくのは窓からなのは何かこだわりがあるのか、彼の今まで過ごした生活故かもしれない。待っている間に熱い茶でも飲もうとポットを火にかけ、湯を沸かしながら彼が出ていった窓を眺める。
この関係が始まった頃の事を考えながら、よくどちらも酷い怪我をせずこれたものだなど、過ぎた記憶を辿る。自分は体の一部を、彼は一部の機能をほぼ失ってはいるが五体満足な状況……とは言え今までそれなりの負傷もあったなと思い出し、あの頃はまだ相方とははっきり言えなかった事も思い出した。
それが今では……
「もどった」
追憶を終わらせたのは思い浮かべていた相方の声だった。出ていった時と同じく、窓から滑り込むように部屋に入ってくる。
「──ああ、レーヴ、おかえり…………ん? あ、いやっ、こ、これはな……」
……今自分の口から溢れた言葉はなんだ!?
しどろもどろに何をとは分からないが、何か繕おうと頭も空回りし口からは言葉にならない単語だけが転げ出ていく。何より「おかえり」などと言う言葉をよく覚えていたものだ。この言葉をかけて誰かを迎えるのはいつ以来か。むしろ最後の相手は誰だったか。
すっと自然に口から滑り落ちた言葉に不思議と違和感は感じないのに、今では胸の辺りがむず痒い。
どうしたものかレーヴに何か変な圧迫感を与えてはいないかと言葉をかけた先を見れば、レーヴがなんとも言えない顔で私を見ていた。
「……だだいま」
微睡みで睡魔に身を委ねるときのように、柔らかく笑ったレーヴの口からは対になる言葉が紡がれる。
「お、おかえり」
改めて言葉をかけるが、やはりむず痒い。
「茶を煎れる。待っていろ」
恥ずかしくなり言葉の通り茶を煎れるべく彼に背を向けたが、背後の気配でレーヴがほわほわ笑っているのが分かる。こぼしてしまった言葉に恥ずかさと同じ位に沸き上がるものがあり、それがよくわからないままでも口の端が微かにつり上がるのを感じた。
【いつかこれが当たり前に】
Interlude 06 End.