『ブラッディサニー組』とは。
Twitterの診断メーカーの診断結果をもとに始まった、
はちすさん(@hati_su8)との共同創作です。

登場人物であるアル・シャインに関してはこちら
相方として登場するレーヴ・ウェイクマンさんは、はちすさん(@hati_su8)の創作されたキャラクターです。

この小話は2021年9月に発行したまとめ本「BLOODY SUNNY From 2015 to 2021」のweb掲載版となります。
掲載順も本と同様となります。


ブラッディサニー猟奇殺人事件とは
 とある街にて主犯格アル・シャイン、共犯者レーヴ・ウェイクマンによって起こされた殺人事件である。
事件はかなり凄惨な内容であったが、主犯格と共犯者が現行犯逮捕されたことにより、捜査はすぐに終了した。その後も警察による情報開示が行われなかった為、衝撃的な第一報以降は新聞に取り上げられることもなく、街の人間の噂からも早々に消えて行った。

ブラッディサニー猟奇殺人事件に関しての考察 01
あの事件はとても不可解だ。主犯と共犯が現行犯で逮捕された事でまともな捜査もされず報道にも詳細な情報が流れなかった。
目撃者や生還者への聞き取りを元に記事を書けば何故か差し止められる。知られたくない事があると言っているようなものだ。
何より街の住人の言葉も気になる『彼等はそんなことはしない』……暗殺者だというのに、庇っているのだろうか。
生還者への聞き取りの一部を仲間から譲り受けたが、そこにも興味深い言葉があった。『黒髪の右頬に傷のある男に襲われた』黒髪? 主犯と共犯の髪はどちらも薄い髪色だったはず。
黒髪……確か被害者の中に一人居たはずだ。他の被害者を守ろうと奮闘したとして死後表彰された、政治家の娘婿だったか。
被害者の死因は大振りの刃物による人体の切断裂傷だが主犯共犯共に普段の得物は小ぶりな刃物だった。
黒髪の男の死因だけが首を掻ききられての失血死とわかっている。
……書き連ねながら、やはり何かおかしいという事だけが浮かび上がってくる。これは調べてみる必要が有るだろう。
(ある新聞記者の手記はここで終わっており、彼自身は街から忽然と姿を消した。)

ブラッディサニー猟奇殺人事件の考察02
アスとふわふわちゃん──ああ、共犯って言われている子のことよ──はあんな事件起こさない。起こすはずないと思う。
なんでって? うーん、あたし記者さんみたいに学がないから上手く説明できないけど、二人とも優しい人だったから。
暗殺で稼いでる人達に対してそんな印象もつのおかしい? じゃあ学校の先生はいつも怒鳴って叱ってばかり? 警察はいつも街の住人に優しくしてくれる? 悪人を捕まえてる? 普段と違う、そうじゃないときは誰だってあるのよ。確かにアスのそうじゃないときは限られていたけれど。
ふわふわちゃんとアスの関係? さぁね。多分貴方が思っているような関係じゃあないの。相方、相棒と聞いているし、あたしにはそれ以上に思えるときもあったけど……実際二人は仕事の相方以上でもそれ以下でもなかったんじゃなかな。
それ以上が気になる? 強いて言えば家族かな。あの二人は血生臭い仕事をしているけれど、あたしが見る限りでは血の臭いと無縁にすら感じたの。肉がダメって知ってるからそのせいかな?
あの二人は生きるために殺めるだけ。体を売って生きるあたしには、本当に二人を理解することはできないのだけれど…きっとそう。
だから、あんな…あんな酷いおもちゃ遊びみたいなことはしない。
(まだ聞きたいことはあったが、その街娼は私から顔を背けると足早に娼館の裏口に消えた。)

ブラッディサニー猟奇殺人事件の考察03
あん? 俺に聞きたいことがある? 珍しいなあんたがそんなことを言い出すなんて、何が知りたい? もちろんお代は貰うぜ──っと、いいね、わかってるじゃねぇか。
アスの事が知りたい? いやあんたも知ってるだろアル・シャインのことは。ああ……あの事件の前後のことか、いや毎夜顔を合わせてる訳じゃないからな。俺はアスに利用されてた情報屋の一人にすぎねぇし…。何か変わったこと? あったかなぁ~……あ、そういやあの事件の一ヶ月位前からどっかの小綺麗な若造が酒場に顔出してたな。珍しい黒髪だったし頬に傷もあったから覚えてるぜ。俺は話したこと無いんだけどよ、マスターがそいつに話しかけられたらしくてさ、アスについてしつこく聞いてきたって言ってたよ。なんか引き継いでる引き継いでないだのよくわからないことを聞いてきたって。
アスとそいつが顔見知りかって? それは知らねぇ。俺は酒場の隅のテーブルでそいつが静かに飲んでたのを見たくらいさ。
なんで話したこともないそんな奴のこと覚えてるかって? 場違いなお坊ちゃんだし黒髪だしよ、何より目が…な……。目がどうしたんだって? やばかったんだよ。小綺麗な坊っちゃんが路地裏の酒場なんかに来たらひんむかれるのが落ちなんだが、みんな避けてたっていえば想像できるか?
マスターに聞けばアスとそいつが顔合わせたかわかると思うぜ?
ん? 俺に情報を仕入れてきてほしい?
……それは断る。関わらねぇ方がいい気がする。やばい話に関しては俺の勘は外れないからよ。あんたもやめた方がいいと思うぜ。
アスとふわふわが捕まってあの事件は解決だ。掘り返す必要は無いだろ。俺は…多分あいつらがやったんじゃねぇと思うけどよ…。命は大事だからよ…。命が惜しくないなら路地裏の酒場の奴等に聞きな。貰ったお代は半分返す。あんたが街から消えないことを祈ってるぜ。
(渡した金額の三分の二を懐に入れ、懇意にしている情報屋の男は路地裏に去っていった。)

ブラッディサニー猟奇殺人事件の考察04
 『アル・シャイン』について聞きたい? ……それは今この街にいる人間のことかい? それとも今までのアス達のことかい?
 ああ、あの事件を調べているんだね。
新聞記者さん、知っていることは代金さえ頂ければ全て教えるよ。でもね、お勧めはしない。わたしも裏稼業の仕事に少し関わるからうわさ話はどうしても耳に入る。ちょっと今回の事件はおかしい。今のアスがあんなことをする理由もないし、するとも思えないしね。
 アスとは継ぐものなのか? そうさね、形はどうあれ継がれていくものだね。血のつながりや技術の継承とかそんなものではない。ただ名前と役割のようなものだけが受け継がれたり、名前にあやかってそのまま名乗ったりだね。この街の人間にとってアル・シャインはおとぎ話に出てくる登場人物みたいなものなんだよ。特に「鷲の使い」の話が人気だね。孤児院でもよく読み聞かせをしていたりするし。あんたが思い描いているような英雄として描かれた話が多く残っているね。なんでもないただの人間のちょっといい話を、少しだけ面白おかしくしているだけなんだけどね。信仰心すらもっている人間がいるみたいだよ。先代のアスはどうやらそういう輩に持ち上げられて精神を病んだようだがね。
……代金を貰えれば全て話すと言ったけれど、話していて嫌な予感しかしないんだよねぇ…。代金はいらないから帰っておくれ。こんな話は街に古くから住んでいる老いぼれを捕まえればいくらでも聞けるはずさ。
(老婆の心から心配する表情に食い下がることができす、老婆の漢方屋を後にした。)

ブラッディサニー猟奇殺人事件の考察05
娘の婿の話を聞きたいだと? あんな胸糞悪いやつのことなど話したくはない。娘の所へ行って聞いて──そうだな、あいつはあれ以来精神病院で隔離されているんだったな。
娘婿の事は気に食わなかったからな、話した事もほとんどない。知っているのは、街の職人通りの出身で裕福な家庭の出ではない事。街の歴史や逸話などに興味があって、特に街で語り継がれている寓話を熱心に語っていたな。何が気に食わなかったんだって? ……どちらかというと気持ち悪かったんだ。あいつの寓話の英雄へのあこがれを熱く語られてから……その時の目が怖くてな。黒い瞳の奥底で何かが暗く燃えているような……。詳しく調べたいということだが、一足おそかったな。あの事件の報せが入り遺体をみた後、部屋に置いてあった置手紙を読んで発狂した娘があいつの部屋を燃やしてしまったんだよ。あいつの部屋は、それは恐ろしいものだったぞ。
なんで火をつけだかって。これだけは記事にするなよ一緒にも燃えてしまったから残っていないんだが、婿から娘宛の置手紙にはこう書いてあったんだと
『アル・シャインを殺し役割を継ぐ為にわたしは事件を起こす』
(政治家になんとか話を聞くことができたのは幸運だったが、聞いた情報、集めた情報がつながりだしたことで、自分の身も危なくなったことを自覚せざるを得なかった。)

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