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酒場のカウンターでグラスの底に残った液体を揺らすアル・シャインの視線はカウンターに置かれたある物に向いていた。
「ねぇ、アル。ハグの日って?」
「……気になるのか?」
「ハグってぎゅっとすること?」
「そうだな。大切な人へ感謝と愛情を込めて抱きしめる日…だそうだが、私には縁遠いものだ」
「あっ、アス。今日はふわふわちゃん一緒じゃないの?」
「アンタが一人でいるの久しぶりなんじゃない」
「これ珍しい林檎仕入れたの、あの子に買って行ってよ」
「お前は覚えていないだろうが、十年前の今日、ここへ運び込まれて来たんだぞ。」
「なんだ、組んでんじゃねぇのか?」
「(しくじったな…)」
生温かく濡れる腹部を押えて路地裏の物陰に身を潜める。手のひら大の金属の破片が刺さった箇所を抑えるがじわじわ溢れ出る液体は止まりそうにない。
「もう一度言う、好きにしろ。私は寝る」
「よお、ここにアスが来るらしいって情報を聞いたんだ。仕事を頼みたい。取り計らってくれないか?」