タグ: ブラッディサニー組2 / 3 ページ
「アス! 今年も請けてくれたのかい? 斡旋屋からはあんたに会えなかったって泣きが入ってたから…今年はどうなる事かと不安だったんだよ」
階段から屋根裏部屋へ続く廊下に出た時、屋根裏部屋のドアの前に布の塊を見つけた。近づくとそれは頭からつま先まですっぽり布を纏った人間がドアを背に座り込んでいる様だった。
待ってくれ、と、おそらく紡がれたろう言葉を断ち切るように右手を引く。喉から血を迸らせながら相手が床に沈んでいくのを見下ろして、その命を摘み取った本人は眉間のしわを深くしていた。
「アス、いい所に来てくれた。一つ仕事を頼まれてくれないか。誰も請けたがらないんだが、この仕事をなんとか納めないと俺がこの街に居づらくなる」
「今日はおやすみする?」
既に身支度を整えたレーヴがベッド脇にしゃがんで、まだ起き上がらないアルの顔を覗き込んでいる
不機嫌を眉間のしわや目付きではっきりと示せば大概の輩は恐怖で後退りしそのまま消えてくれるのだが、この女だけは口元の笑みはそのままに一歩私に歩み寄る。
「……物音がしたと思ったら、珍しいこともあるもんだ。アンタがうちに来るなんてね」
酒場のカウンターでグラスの底に残った液体を揺らすアル・シャインの視線はカウンターに置かれたある物に向いていた。
「ねぇ、アル。ハグの日って?」
「……気になるのか?」
「ハグってぎゅっとすること?」
「そうだな。大切な人へ感謝と愛情を込めて抱きしめる日…だそうだが、私には縁遠いものだ」
「あっ、アス。今日はふわふわちゃん一緒じゃないの?」
「アンタが一人でいるの久しぶりなんじゃない」
「これ珍しい林檎仕入れたの、あの子に買って行ってよ」