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仕事を終え一緒に私の部屋に入ってからすぐ、そう言ってレーヴが窓から出ていってしばらく経つ。ドアから入るのに出ていくのは窓からなのは何かこだわりがあるのか、彼の今まで過ごした生活故かもしれない。
「…やはり、炎症をおこしている…か」
右脇腹と右太股にガーゼと包帯が巻かれており、その周囲が赤くなって熱を持っていた。
仕事中に振りだした雨は、事が済み依頼人の待つ酒場へ向かう頃には上がっていた。
「アス! 今年も請けてくれたのかい? 斡旋屋からはあんたに会えなかったって泣きが入ってたから…今年はどうなる事かと不安だったんだよ」
階段から屋根裏部屋へ続く廊下に出た時、屋根裏部屋のドアの前に布の塊を見つけた。近づくとそれは頭からつま先まですっぽり布を纏った人間がドアを背に座り込んでいる様だった。
待ってくれ、と、おそらく紡がれたろう言葉を断ち切るように右手を引く。喉から血を迸らせながら相手が床に沈んでいくのを見下ろして、その命を摘み取った本人は眉間のしわを深くしていた。
「アス、いい所に来てくれた。一つ仕事を頼まれてくれないか。誰も請けたがらないんだが、この仕事をなんとか納めないと俺がこの街に居づらくなる」
「今日はおやすみする?」
既に身支度を整えたレーヴがベッド脇にしゃがんで、まだ起き上がらないアルの顔を覗き込んでいる
不機嫌を眉間のしわや目付きではっきりと示せば大概の輩は恐怖で後退りしそのまま消えてくれるのだが、この女だけは口元の笑みはそのままに一歩私に歩み寄る。
「……物音がしたと思ったら、珍しいこともあるもんだ。アンタがうちに来るなんてね」